「アリコート-aliquot」とは「割り切れる」とか「整数比になる」という意味です。音は物体の振動が空気を震わせて耳に飛び込んでくるのですが、その振動数によって「音程」が決まります。振動は共鳴を呼びますが、弦のように均質な材料の場合、(張力など他の条件が同じ場合)長さが2分の1になれば振動数が2倍になります。2倍の場合は1オクターブ上の音程ですよね。さらに3倍、4倍など、「割り切れる」「整数比になる」と、より良く共鳴します。その物理法則を使って、敢えて共鳴効果を出しているのが「アリコート方式」です。
ピアノの内部の弦には、ハンマーに打たれて振動する「有効弦」と、その振動に共鳴する「共鳴弦」があります。図をご覧ください。

有効弦、共鳴弦の概念図

有効弦、共鳴弦の概念図(ヤマハホームページより)


ピアノの一本一本の弦にはそれぞれ「有効弦」「(前方)共鳴弦」「(後方)共鳴弦」が備わっています。これらの弦の長さが2対1ですとか4対1に整っていると、有効弦の振動により共鳴し易いわけですね。こちらの写真をご覧ください。
ヤマハグランドピアノのアリコート方式弦枕

ヤマハグランドピアノのアリコート方式弦枕(まくら)が有効弦と共鳴弦を整数比に揃えている。

この写真はヤマハグランドピアノC5Xの内部の写真です。有効弦と共鳴弦の関係、共鳴弦と有効弦の比を整数比にする役割の「アリコート方式弦枕(まくら)」がご理解いただけたら幸いです。ご来店いただければ現品を見ながらご説明できますのでわかり易いと思います。

スタインウェイではデュプレックス・スケールという
アリコート方式の中にはブリュートナーのように、一つのキーに対して弦を4本張り、そのうち1本をハンマーが打たないようにし、共鳴弦として活用する例もありました。この場合は有効弦対共鳴弦の比は1:1になります。しかし共鳴効果を狙うにはあまりにコストが高くつくため、少数派になっています。スタインウェイ社これとは違い上述のように一本の弦の中で共鳴弦を作り出す方法で実現させました。これをデュプレックス・スケールと名づけ、特許を取りました。(その後特許期限が到来し、日本を含む多数のメーカーがこの仕組みを取り入れています。)

敢えてアリコートを採用しないモデルやメーカーもある
楽器の音色は受け取る人によって好みが違います。従ってアリコート方式を使わないモデルやメーカーもあります。この写真をご覧ください。
アリコート方式弦まくらのないモデル(ヤマハ)

アリコート方式弦まくらのないモデル(ヤマハ)

ヤマハでもかつて「Gシリーズ」と呼ばれたグランドピアノにはアリコート方式を採用していない時期もありました。「音がすっきりしていて気持ちが良い」とそれを好まれるお客様もいらっしゃいました。ベーゼンドルファーなどにもそのようなモデルが多数あります。要はどちらが好きか、どちらが自分の音楽を表現しやすいか、で決まってくるものなのだと思います。

アップライトピアノのアリコート方式は隠れていて分かりにくい
アップライトピアノのアリコート方式をご説明するのは結構難しいです。というのは、アリコート方式にするための弦まくらは、「弦押さえ-プレッシャーバー」という金属部品の裏側を凸状にして整数比に揃えているのですが、表面からは見えません。また、共鳴弦の長さがとても短いので効果も分かりにくい、というのが正直なところです。
アップライトピアノの「アリコート方式弦押さえ」の写真をご覧ください。
ヤマハUX30Blのアリコート方式弦押さえ(プレッシャーバー)

ヤマハUX30Blのアリコート方式弦押さえ(プレッシャーバー)


これを見ても分かり難いですよね。すみません。ですから本当にお客様が弾いてみて、または店頭担当者に弾いてもらって、その響きが「好きか好きでないか」でご判断くださるのが一番良いと思います。