トップサポートはヤマハアップライトの現行モデルの内、上級クラスの”YUS”シリーズに取り入れられた機構です。トーンエスケープと同様、響板-sound board から発する本来のピアノの音色を楽しむために、前屋根を少し開けた状態に保持する仕組みです。前屋根を全部開ける事はどのアップライトピアノでも可能ですが、少し開ける事によって、響板から発する音が前屋根に当たって丁度演奏者やピアノの前にいる人の耳に届きやすいのです。
ところでヤマハは何故このような「トーンエスケープ」や「トップサポート」という機構で響板から発する音にこだわるのでしょうか?
電子ピアノと違い、本物のピアノには88音が同時に発音できる「共鳴体」が備わっています。つまりそれは「弦」です。弦の数は1台のピアノに220本ほどありますが中~高音部は弦3本で1音を出していますから同じ音程の音は鍵盤の数と同じ88音。これらの音が、実際に弾いている音に共鳴しやすいキー同志が共鳴して倍音を発生し、音に「コク」を含ませているのです。
人間の美意識は不思議なもので、純粋すぎる、単純すぎるものには美を感じず、例えば不揃いな焼き色のレンガが積まれた塀に美しさを感じる事があります。ですから、88の弦が発する音も、ある程度混合し不揃いであっても、それぞれの音が個性を主張し、全体として音楽を形成する事があります(勿論程度問題もありますが)。
サンプリングから音を取る電子ピアノではなく、不揃いで個性的な音達のピアノに親しんで欲しい、特に耳が発達する子供たちには、という思いです。